「あなた、今日から女の子ね。」という言葉には切ない響きがあります。
小学校高学年のころ毎晩考えていたことがあります。
それは、自分が中学に上がる日のことです。
中学の入学式を間近に控えた朝、目が覚めると、昨夜ベッドの横に出しておいた服が見当たりません。
「お母さん、今日着ていく洋服はどこなの。」
と大声でお母さんを呼びます。
するとお母さんが来てくれます。
「どうしたの。」
「今日着る服を昨日の晩に出しといたのがなくなってるんだ。」
「これを着ていくのよ。」
お母さんが僕に渡したのは、女子の制服でした。
「お母さん、それお姉ちゃんの中学の時の制服だよ。」
「そうよ。今日から毎日この制服で学校に行くのよ。」
「僕、男の子だよ。」
「今日から女の子になるのよ。」
僕はお母さんが冗談を言っているのだと思って、タンスの中から別の服を取り出そうとすると、タンスは空っぽ。
「男の子の服は要らなくなったから全部捨てたわ。今日からお姉ちゃんのお古を着るのよ。」
・・・・
でも、中学に上がる日、朝起きると、昨晩出しておいた服がちゃんとベッドの横にありました。
仕方なく、僕はその服を着て学校に行ったのです。
高校に上がるときも同じことでした。
紺のプリーツスカートをはいて学校に行きたかったのに、黒い学ラン。
暗い毎日を過ごしたのでした。
でも、その夢が今日かなったんです。
美人の女性から「あなた、今日から女の子よ。」と突然言われて、強制的に女装させられて・・・
いや、いや、と言いながら、心の中では昔からの願いがかなってウキウキしていたんです。