「ひろみの場合」は、性転換手術を受けるために病院に訪れた男性患者、ひろみを主人公とする小説で、非常に独特なストーリーを描いている。ひろみは、待合室で見た生々しい手術動画に恐怖を感じ、手術をドタキャンして病院を逃げ出してしまう。
この小説はひろみが痔の手術を受けるために病院に訪れるシーンから始まる。しかし 痔の手術を受ける予定だったひろみは、取り違え事故により、同姓同名の性転換手術の患者のひろみと間違われてしまう。手術室で起こる一連の出来事は、二人のひろみの人生を根本的に変えることになる。
性転換手術の待合室で、ひろみはオペ動画を偶然見る。動画の中では、男性の生殖器の一部を活用して女性のような体を作る極めて複雑で大変な手術が映し出されている。動画の内容は、ひろみを深く恐怖させる。
男性のペニスや睾丸が精巧に加工され、女性の陰部として再形成されるプロセスは見る者を震撼させる。この手術の複雑さは、単に技術的な側面だけではなく、心理的な影響も含む。ひろみは、手術後の自分がどうなるのか、完全に予測できない恐怖にさいなまれる。動画の中で見た手術の詳細、例えば、ペニスの外皮を反転させて膣の内壁として利用する方法や、睾丸の皮膚を陰唇として活用する技術がひろみの心をさらに追い込む。ひろみの逃走は、恐怖と混乱の頂点で起こる。病院を逃げ出した方のひろみは、自分が何者であるのか、完全に自信を失う。
一方、間違って手術を受けた方のひろみが目覚めると自分自身が根本的に変わってしまったことに気付いて愕然とする。つり上がった細い円弧が目の端を過ぎたところまで伸びていて、びっくりしたような表情をした顔は、知らない女の顔のようだった。鼻の下の薄い無精ひげが不自然で、ひろみは恥ずかしく思った。
性転換手術後のひろみは、完全に新しい身体を持つことになる。院長の説明によると、精巣を取り去った後、海綿体を除去し、ペニスの外皮を反転させて膣の内壁として利用した。睾丸の皮膚は陰唇として活用され、ペニスの先端につながっていた神経線維を温存して亀頭の一部を生かして形成したクリトリスにつなげられた。こうした精巧な形成技術により、外観上では普通の女性と区別できない身体になった。(これは病院から逃げ出したもう一方のひろみが見た動画の内容そのものだった。)
ひろみにとってこの新しい身体は、まだ完全に受け入れることができなかった。院長と看護師が訪れると、ひろみは今までに経験したことのない感触を陰部で感じる。看護師は患部をきれいに洗浄し、ひろみが徐々に新しい身体に慣れていく過程を描く。「ひろみの場合」は、単に性転換手術のプロセスを描いた小説だけではなく、人間の感情やアイデンティティの探求を深く描いたものである。ひろみの恐怖、混乱、そして徐々に新しい身体を受け入れる過程は、視聴者を深く魅了し、忘れられない体験を提供する。